武庫川女子大学
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武庫川学院80周年

馬は恋人!?馬術部を支える2頭の名馬[2017/10/30更新]

 武庫川女子大学には、女子大では珍しい馬術部がある。1967年創部の伝統あるクラブ。自前の馬場を持たず、自馬は16年前に購入したムコワカワシ(愛称:ワカ、雄、21才)1頭きりという小所帯だったが、昨年、2頭目の馬が加わったことから、人馬ともにモチベーションが上昇中だ。2017年8月に開かれた関西学生自馬馬術大会の障がい飛越競技で、平野貴子さん(薬学部薬学科4年)が並みいる強豪を抑えて優勝した。同じ種目に出場した白井彩菜さん(心理・社会福祉学科4年)も5位入賞を果たし、“新生・馬術部”を印象付けた。
 「自分では満足のいく出来ではなかったので、まさか優勝なんて…。馬のおかげです」と平野さんは控えめだ。快挙を遂げた馬は昨年、新たに加わったムコダズウェル(愛称:ダズ、雄、5才)。滋賀県の乗馬クラブで生まれ、馬術の練習馬として育てられた。“先輩馬”のワカは、もともと地方競馬で活躍したサラブレッド。長年、唯一の練習馬として部に貢献し、2015年、関西学生馬術連盟から「功労馬」として表彰された。体力の衰えが心配されていたが、若いダズが加わったことで、ワカの負担が減り、部員の練習量も増えた。大会では、一つの種目に同じ馬は2回までしかエントリーできないことから、これまで制限された大会への出場のチャンスも広がった。
 運動系クラブで唯一、生き物を扱うのが馬術部だ。現在、部員は8人。馬は神戸市兵庫区の菊水ゴルフクラブ内にある乗馬クラブ「トゥインクル」の厩舎にいるため、部員たちは大学から約1時間かけ、同クラブに通い、馬の世話と練習をしている。
 厩舎で待つ2頭の馬の元気な様子を見ると、部員たちは、ほっと胸をなでおろす。元気に見えても、風邪をひいたり、爪にばい菌が入って急激に体力を失うリスクがあり、気が抜けない。全身にブラシをかけてマッサージし、装具をつけ、馬場に連れ出す様子は、まるで恋人をいとおしむよう。馬場に出ると、一人ずつ乗馬して、常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈足(かけあし)をこなし、馬と呼吸を合わせていく。
 「キャンパスに馬場を持ち、自馬を10頭以上抱える大学が多い中で、不利な条件にめげず結果を出せたのは、自信につながりました」と藤本智子コーチは言う。自身も武庫女の卒業生で、馬術部の先輩だ。
 「乗り手によって、馬の動きが変わる。馬が乗り手の状態を示すバロメーターになるんです」と藤本コーチ。馬の個性もある。ワカは頭がよく、頑固。初心者には親切だが、少し侮ると態度を一変させ、一歩も進んでくれないことも。ダズはまだトレーナーの調教中。進んで障害物に向かっていく若々しさが、先の快挙につながった。部員たちは馬の機嫌や調子に振り回されながら、「自分の努力だけではどうにもならないのが、馬術の難しさであり、面白さ。メンタルを鍛えられます」と、前向きだ。平野さんと白井さんは、大学に入ってから馬術を始めた。振り落とされたことも1度や2度ではないが、「一度始めたらやめられない競技」と、口をそろえる。「しばらく練習場に行かないと、ワカやダズに会いたくなります」。やっぱり恋人のようだ。 

(米)

世界に一冊だけの本づくり――製本の魅力伝える卒業生[2017/10/27更新]

 ブックデザイナーとして活躍する卒業生がいる。武庫川女子短期大学被服科2部卒の中尾エイコさん(写真右)。テレビや雑誌にたびたび登場し、「フランス国際製本ビエンナーレ」で2度、部門優勝を果たすなど、受賞歴も多い。

 革の背表紙をつけた本、布を貼り付けた和とじ本。パラパラとめくると、中の紙も一枚一枚、淡く染色されている。「本のアトリエ・EIKO」(大阪市北区)に並ぶ本はすべて一点ものだ。“自分だけの本”を作りたい人が、中尾さんの製本指導を受けようと、全国から訪れる。
 本に込める思いは人それぞれだ。「亡くなった母の日記を製本して、兄弟に配りたい」「思い出の辞書がぼろぼろになったので再生したい」「コンクールに出品する本を作りたい」――。自分で作るほか、イメージを伝えて中尾さんに発注することもできる。
 小学生のころから創作やデザインが得意で、香川県の高校時代、商業美術部で腕を磨いた。「武庫川の短大なら昼間、事務職員として働き、夜、2部で勉強できる」と、高校から勧められ、進学を決意。色彩やデッサンの授業のある被服科を選んだ。当時の思い出を尋ねると、「文化祭で手書きの看板を作ったこと(写真中央)、反物から合わせの着物を作れるまで指導してもらったこと、卒業式で総代を務めたこと…」と、いくつかのシーンを挙げ、懐かしんだ。
 卒業後、グラフィックデザイナーの夫とデザイン事務所を立ち上げ、イラストレーターとして活動していたが、子育て中、長女の発する子どもらしい言葉を本にしたくて製本を学んだ。かたことの言葉に木版画を添え、カーテンのハギレで表紙をつけた一冊(写真左)が、ブックデザイナーとしての出発点になった。
 「製本の奥深い魅力に引き込まれ、以来、製本一筋です」と中尾さん。サイズや厚みを決め、表紙の材料を選び、紙を折って穴をあけ、糸でとじる。1冊仕上げるのに最長で60時間かかるが、基本の工程を覚えれば、市販の本をばらしてとじ直したり、年賀状を年ごとにまとめたり、応用がきく。製本することで、本を「読む」だけでなく、「手に取る」「観賞する」楽しみが加わるという。
 「かつて本は貴重品で、傷みを防ぐ製本の技術が発達しました。今は電子書籍が普及して、本が読み捨てられる時代ですが、美しく製本した本は心が潤うもの。多くの人にこの楽しさを知ってもらいたい」。
 簡単なノートの製本を体験させてもらった。紙を折り、穴をあけて糸でとじ、布をノートの大きさに切って、背表紙に貼り付けると完成だ。世界で1冊だけのノートに、心が弾んだ。

(米)

きのこの発酵能に光を当てたパイオニア――食物栄養学科の研究力[2017/09/18更新]

 食物栄養学科の松井徳光教授は、きのこの発酵能を使った機能性食品研究の第一人者だ。長年の研究業績が認められ、きのこ界のノーベル賞といわれる「森喜作賞」(2011年)、日本きのこ学会の学会賞(2016年)という、きのこ研究者の2大頂点を極めた。
 農学部出身で専門は微生物学。京都大学化学研究所の研究員時代は、遺伝子組み換えや酵素合成を得意としていた。きのこを研究テーマにしたのは、1990年に武庫川女子大学に着任してからだ。「食物栄養学科にふさわしいテーマを見つけよう」と、きのこの人工栽培に注目し、研究を続ける中で、きのこに抗トロンビン活性や線溶活性があることを確認した。血栓を溶かして心筋梗塞や脳梗塞の予防に役立つ作用だ。きのこにアルコール脱水素酵素があり、アルコール発酵することも明らかにした。
 実用化をめざし、アルコール発酵能を活かした清酒、ビール、ワインの醸造に成功した。ワインの場合、三角フラスコにブドウ果汁ときのこの菌糸を入れて攪拌を続けると、菌糸が発酵ダネとなって、アルコールを醸成する。味もよく、きのこの健康効果もついてくる。ほかにも、乳酸発酵能のあるきのこからチーズを作ったり、大豆にきのこ菌糸を生育させて、きのこ納豆を作ったり。発酵梅、発酵豆乳、発酵ウスターソースと、きのこ発酵食品のバラエティは広がった。
 研究の過程で多くの特許を武庫川学院と共同で取得した。アルコール飲料を中心に企業から問い合わせが相次いだが、設備投資に巨額の費用がかかること、微生物の扱いが難しく、安定的に生産できないことから、製品化には至っていない。「当初は『酵母や麹を使わないのに、ワインや清酒といえるのか』『チーズは乳酸菌で発酵させるものだ』という否定的な声もあり、既成概念との戦いでした」と振り返る。
 松井教授自身の人懐こいキャラクターにも光が当たった。「世界一受けたい授業」(2011年、日本テレビ系)をはじめ、テレビやラジオに数多く出演。滋賀県高島市のたかしま発酵食文化カレッジで学長を務めたこともある。
 「武庫川女子大学には、教員の自由な研究や活動を支える環境がある。研究を通して企業や行政との協働が生まれ、視野が広がった。それがまた、次の研究や教育に活かされてきた」と、松井教授は言う。食物栄養学科が日本屈指の管理栄養士養成施設として、毎年、高い国家試験合格率をはじき出す一方で、病院、福祉分野だけでなく、食品メーカーなど多様な進路を開くのは、松井教授をはじめユニークな教員がそろい、高い研究力と教育力を両立しているからだ。
 松井教授は現在、日本きのこ学会副学長、発酵と酵素の機能食品研究会会長を務め、大学では学生部長として多忙な日々。院生やゼミ生を指導して、きのこや発酵の研究も続けている。研究室では菌糸を入れた三角フラスコが回転し、おがくず培地できのこが育っている。この研究室から生まれた研究成果が、夢の機能性食品をもたらす未来は、そう遠くないかもしれない。
 

(米)

世界で認められた歌声――創部76年の附属中高コーラス部[2017/09/11更新]

 「もっと柔らかく!」「“ある”の“る”が低い!」「あかん!一回言ったことができていない」――。
 2017年8月23日。全国高校野球選手権大会決勝戦で広島・広陵高校と、埼玉・花咲徳栄高校が熱戦を繰り広げていた同じ時刻、甲子園球場から約1キロ離れた武庫川女子大学附属中学校・高等学校の芸術館で、コーラス部の高校生約60人が、10日後に迫る「第84回NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)近畿大会」に向け、熱のこもった練習を続けていた。壇上から檄を飛ばすのは、コーラス部を率いて12年の岡本尚子顧問だ。 
 附属中高コーラス部は1941年創部の伝統のクラブであり、全国大会で常にトップを狙う実力派だ。全日本合唱コンクール全国大会に中学が26年連続、高校が24年連続で出場中。”コーラスの甲子園”と称される「Nコン」でも、全国大会に中学が14回、高校が15回出場している(2016年度まで)。
 この日、高校生の練習は午後1時から約3時間、ノンストップで行われた。1小節ごとに入る指導はまさに“ミリ単位”だ。――歌詞がセリフとして胸に響くか。表情に心が入っているか。パート同士の連携はどうか。上質な歌声になっているか。そもそも音程や速さは正確か――。「パーパーパンパンパパパパや!」「ガーと前にいく」。曲想が盛り上がると岡本顧問の動きは大きく、言葉も荒くなる。生徒らはそのたびに「はい!」と声をそろえる。一瞬も集中力が途切れないのはさすがだ。出場は最終的に40人に絞られる。練習の前後にも、廊下や空き教室で、自主練習する生徒らの姿があった。
 こうした光景はこの時期に限らない。正月と盆の数日を除き、練習は土日も含め、年中無休。コンサート、コンクールが次々にあり、海外遠征もある。2017年4月には、高校2、3年生がアイルランドで初の国際コンクールに参加し、ベストソング賞を受賞した。生徒らの歌声を、観客がスタンディングオベーションでたたえたという。
 アイルランド公演に参加した3年生に話を聞くと、「客席と舞台が一つになったのを感じて、コンサートが楽しい、と心から思いました」(片山琴音さん)と、明るい答えが返ってきた。でも、毎日クラブ活動で疲れないのだろうか。「良い賞をもらえると、しんどさも吹き飛んで、頑張ってよかったと思えます」(山下真弥さん)、「休みたい日もあるけど、部活が好きなので、みんなで高めあえる時間がうれしい」(長田紫苑さん)と前向きだ。一つ一つの動作が折り目正しく、言葉遣いもすがすがしい。これもコーラス部の伝統だ。部長の長田さんは「武庫川の代表として、学校のイメージを汚さないよう、マナーには気を付けています。先輩たちが積み上げた伝統をしっかり受け継いでいきたい」と、力強く語った。
 Nコン近畿大会は9月2、3日に行われ、中高とも金賞を受賞して全国大会出場が決まった。全国大会は10月7日(高校)、9日(中学)に開催される。 

(米)

企業の依頼受け、本気のCMづくり――広告メディア演習[2017/08/04更新]

 2017年度で7年目を迎える情報メディア学科の「広告メディア演習」(2年後期)は企業と連携し、商品やサービスのコンセプトを、30秒CMで表現する実践型の授業だ。これまでに大阪市水道局、NTT西日本などと連携し、それぞれのCMを作成した。2016年度は西宮市の酒造メーカー「白鷹」と連携して大吟醸のCMづくりに挑み、商品ブランドCMと企業CMの2部門に分かれて計11作品を制作。「極上 白鷹で生まれ変わる!」と「紅葉」の2作品が「白鷹賞」に選ばれた
 
 「極上 白鷹で生まれ変わる!」(商品ブランドCM)は、伊勢神宮御料酒に選ばれる格式ある日本酒と、若い女性の知的で上品な美しさをリンクさせた点が女子大生らしい。
 ――「みんなきれいになってるだろうな」。中学校の同窓会に向かいながら、女性が自信なさげにつぶやいた。そこへ、白いひげを蓄えたユーモラスな“はくたかさん”が現れ(写真左)、大吟醸を飲ませると、女性はたちまち美しく変身。自信を持って会場に向かう。
 「紅葉」は、紅葉のシーズン、若い女性が神社に参拝する澄んだ心持を、大吟醸の混じりけのない透明感に重ねた。砂利を踏むヒールの足元や、ライダージャケットをはおって手水を使う様子(写真右)が、これまでの「日本酒=和風」のイメージを覆し、新鮮だ。随所に挿入される紅葉の赤が効いている。制作した学生らは「西宮神社に何度も通ってロケをしました。紅葉の色や重なり方、お酒の注ぎ方、照明の当て方など、美しい映像を撮ることにこだわりました」と言う。
 
 この授業ではCMづくりの理論や技術を学んだあと、3,4人のグループに分かれ、企画、絵コンテづくり、撮影、編集、音入れまで、すべて学生の手で作品を作り上げる。白鷹の澤田朗社長らもたびたび授業に参加し、途中経過を見ながら意見を述べた。各グループがいわばCMの制作会社であり、コンペの現場に居合わせる緊張感がある。
 澤田社長は、「若い人の日本酒離れが進む中で、若い女性は日本酒メーカーとして一番掘り起こしたい層。まずは女子学生に日本酒を知ってもらい、CMづくりを通して、われわれが気付かなかった若者ならではの視点を提供してもらいたい」と、連携の狙いを語る。
 広告メディア演習は、4人の教員が協働して作り上げる授業としてもユニークだ。かつて広告会社に勤務し、マーケティング戦略プランナーとして活躍した井上重信講師、映像制作や芸術表現を専門とする肥後有紀子講師と荒川美世子講師、マーケティング戦略の理論面から統括する赤岡仁之教授が、それぞれの専門性を生かして指導にあたる(写真中央)。「専門分野を寄せ合うことで、いろんな角度からアドバイスでき、より高度な授業が可能になる」と赤岡教授。
 授業実施期間は、学内のそこここで、ビデオカメラと一升瓶を抱えた撮影クルーを見かけた。クライアントの本気のまなざしが学生のやる気を引き上げ、教員らのプロフェッショナルな指導が作品のクオリティを“本物”の領域に高めている。

(米)



 

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